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2011年10月30日
僕のガンランスは砲撃ができる。
僕はDPSが少ない の続き。
というわけで、またもや藍瑠を引きずって、俺はクラスにやって来た。
俺は人生の間、あと何キロこいつを引きずるのだろうかと考えつつ、窓際の席を選んで座る。
もらったお守りは、とりあえず紐を手首に通してぶら下げておくことにした。
急な編入だったはずなのに机が足りているのは、元々俺はこのクラスになる予定だったのを、特別能力開発クラスとやらに変えられたからだろうか。
なんだよ。だとしたら、マッチポンプじゃねえか。
教師は自分を我輩と呼ぶ、やたら豪快そうな髭面の体育教師だった。
俺は教師の話を聞き流しながらクラスを見渡す。
特に警戒すべきヤツはいなさそうで、平和な学園生活を満喫できそうだ。
そう。普通いいね。普通サイコー。
俺は本来、こういうクラスでその他大勢としてやっていくのがお似合いなんだよ。
そんなことを考えているうちに、校内放送が流れて、俺たちは講堂に移動を始めた。
廊下を歩いていると、顔はそっくりなんだが、襟巻きみたいな髪型のと、喉仏が妙に目立つのと、トサカ頭の三人組が前を歩いていた。
まあ、三つ子なんだろうけど。トカゲ顔ってああいうのを言うんだろうなあ。
などと思いつつ、廊下の角を曲がる。
階段を降りる直前、なんか黒い壁のようなものにぶつかった。
いててて。
顔を押さえつつ前を見直すと、それは人間だった。
今日は良く人にぶつかる日だ。
藍琉の場合はぶつかられてるんだが。
「あ、悪い」
俺は一応詫びつつ、そいつの顔を見る。
背はそんなに高くはないが、ゴツい男だ。
腹の出た体型で、腕が太い。
「あー?何だお前ー?」
そいつは口を大きく開け、こちらを威嚇するように声を出す。
今講堂に向かっていると言うことは、こいつも新入生のはずなのだが、手にははちみつクッキーの箱が握られており、口の回りにはクッキーの食べかすが点々とついている。
あー、うまいよねー。はちみつクッキー。みたいな。
そんなわけあるか。普通食わないだろ、今。ああめんどくさい。
俺はことを穏便に済ませるべく、事情の説明を試みる。
「いや、ちょっとよそ見してて」
相手は俺の話など聞いていないようだった。
「俺は青中の芦田だぞぉ?」
え、ごめん。知らない。
アオチューって何処ですか?ここは門幡三高ですが?
俺の中のめんどくさいメーターは順調に上昇している。
ま、まあ、話を合わせておこう。
「あ、ああ、アシダくん、ね?
君があの芦田くんかぁ。会えて嬉しいよ。よろしく」
俺は芦田の手を強引に握り、ブンブンと振る。
人類皆兄弟。袖振り合うも多生の縁。だけど名前は名乗らない。
こんなことでややこしい話に巻き込まれてたまるか。
俺は眉間にシワが寄りそうなのを隠しつつ、芦田に笑いかける。
「あ、それ・・・」
芦田は一瞬戸惑って、こちらのペースにはまりそうになったのだが、俺の手首を見て動きが止まった。
「お前、も・・・?」
そういう芦田の襟をはだけた学生服の首もとには、お守りが覗いていた。
芦田の表情が、ゆっくりと狂暴なものに変わろうとする。
何だこいつ?急に?
「そこ、早くしないと入学式が始まるぞ!」
先を歩いていた担任が、俺たちに声をかける。
芦田は俺のことを忘れたように緩慢な動きで振り返ると、そのままのそのそと歩いていった。
俺は芦田と少し間を置き、階段を下る。
階段の踊り場で、列の様子を見ていた担任が、俺が通りすぎると同時に呟いた。
「芦田か・・・」
俺が振り返ると、担任はニヤリと笑った。
「まあ、最初の・・・としては、ちょうどいいんじゃないか?」
なんか不穏な単語が聞こえた気がしたが、俺は聞かなかったことにして、そそくさと講堂に向かった。
そんなこんなで。
入学式はつつがなく進行した。
突っ込み所があるとすれば、新入生代表がなぜか白ランに長髪だったぐらいだろう。
昔のマンガか?別にいいけど。
投稿者 ushila : 2011年10月30日 10:51
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