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2011年11月04日
クマとネコと竜撃砲
突発モンハン学園バトル小説の続き。
ぼちぼちタイトルがネタ切れ風味。
入学式が終わりクラスに戻る。
担任の無駄に豪快な訓示のようなものをありがたくちょうだいしたまま受け流し、下校時刻と相成った。
で、まだ午前中なわけだが。
半田家の両親は共働きであり、あまり教育に熱心なたちではないので、入学式に両親は来ていなかった。
俺としては自由にやりたいので、むしろありがたい。
藍瑠には母親が駆けつけており、昇降口を出た藍瑠と、その友達まで巻き込んでニャーニャーと賑やかにやっている。
しかし毎度思うのだが、あの親子は似すぎではないのか。藍瑠クローン説。
それはさておき、俺の懐には、母親から昼飯代として渡された千円札が入っていた。臨時収入と言うやつである。
とりあえず昼飯はファーストフードで済ませるとして、残りはどうするか。
昼までは少し間があるので、俺は町をぶらつくことにした。
この町は、いわゆる大都市からは電車で1時間ほど離れた、地方の小さな市だ。
近隣には海も山もあり、自然が多く残る湿地帯などもあったりするし、温泉も出るのだが、特に観光地として栄えているというわけでもない。
ゆえに町と言っても大した規模ではなく、辛うじて昔ながらの映画館がつぶれずに残っているぐらいである。
したがって、ぶらつくにも食事をするにも、選択肢は限られてくるわけである。
入学式はわりとどこの高校でも共通なのか、町には真新しい制服の学生が何人か連れだって歩く姿や、それこそ藍瑠のような親子連れが多く出歩いていた。
そんな人たちを横目に見ながら、とりあえず本屋に入る。
いつも立ち読みで済ませている月刊の漫画雑誌がちょうど発売していたので、ちょっと時間をかけて読んでみた。
脱落した話が面白そうな展開なのだが、残念ながら話の前後関係がわからなかった。
ついでに単行本コーナーを覗いたり、グラビア雑誌のコーナーを冷やかしてみたりしていると、何となく腹が空いてきた。
本屋を出て、たしか右手にハンバーガー屋があったはずだと思いつつ、歩道を歩く。
「おい、お前」
後ろからだみ声がする。
俺じゃないよな、と思いつつ歩を進めると、声の主は大声になった。
「お前だ、そこの高校生!」
俺は辺りを見回す。
なぜか周囲の視線が俺に向いている。
いや、違うでしょ。
目の前の制服姿の男子に目をやると、そいつの視線は俺を経由して、俺の後ろに向かった。
俺も思わず振り向いてしまう。
まず目に入ったのは、はちみつクッキーの箱。
それから、食べかすのたっぷり付いた、制服の襟。
あー。目上げたくねー。
もう誰かわかったし。
「探したぞー、お前ー」
そいつ、芦田はゆっくりした口調で話を続ける。
俺はこいつに付きまとわれるようなことを何かしたのだろうか。
「お前、俺と戦えー」
芦田はこちらの気分を無視して言葉を繋ぐ。
待て。
まっっっったく話が見えん。
なんなんだこいつは。
俺は眉間に手をやる。
「石を持ってるヤツを倒すと、俺は強くなるんだ」
今度はいきなり本題らしい。
石?
そう言えば、さっきこいつはお守りを見て顔色を変えていたな。
「だからお前、俺と戦え」
芦田は太い腕で自分の襟元からお守りをつかみ出し、俺に突き出す。
「……」
どうしたもんかなー。
とりあえずこんな往来の真ん中で頭の悪い問答を続けるのも、これ以上こいつに付きまとわれるのも勘弁願いたかった。
「わかったよ。とりあえずここじゃ何だから」
俺は芦田を裏道に誘導する。
芦田はニヤリと笑い、俺のあとを付いてきた。
裏道に入ると、芦田はいきなりぼそりと「ハント」と呟いた。
芦田の体が一瞬眩しい光に包まれ、次の瞬間、青くてもこもこした衣装に身を包んでいた。
そして、手には大きな木槌を握っている。
辺りを見回すと、さっきまでの寂れた裏通りの風景は、緑の林に変わっていた。
「どうした、お前」
ずんぐりした体型と相まって、青い熊か何かにしか見えなくなった芦田が、身を乗り出して俺を威嚇する。
むしろこいつはこの状況を疑問に思わないのか。
「お前も早く武装しろー」
芦田はさらに両手を振り上げる。
いや、ないだろ。
この状況は逃げるだろ、普通。
俺は芦田に背を向け、思いっきりダッシュする。
景色が変わっていて見当が難しいが、15メートルほど先を右に曲がれば、さっきの通りに戻れるはずだった。
「逃げても無駄だぞー」
芦田はハンマーを後ろ手に構え、のしのしと俺の後ろから迫る。
俺は見当で曲がり角のあたりを右に折れたが、景色は林のままだった。
芦田は建物があるはずの場所を直進して俺を追ってくる。
とりあえず、情報不足だ。
ここがどこで、芦田はどんな仕掛けで変身したのか。
足にはそれなりに自信があるにせよ、あのでかい木槌で殴られたら一発で気持ちよく眠ってしまうだろう。
芦田の攻撃から身を守りつつ、ここから脱出する方法を探すには、どうすればいいのか。
俺はひとつの結論にたどり着き、実行に移した。
「ハント!!」
一面に光が迸る。
光が消えると、俺は笠と着物のような衣装に身を包み、右手に盾を、左手に奇妙な形の槍を持っていた。
投稿者 ushila : 2011年11月04日 01:21
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