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2011年11月11日
これはガンスですか?
突発モンハン学園バトル小説の続き。
「熊ニャ?」
藍瑠は驚いた様子でわたわたと手を振る。
「ああ。熊だ。ケダモノのな」
痛みに怒り狂う芦田の姿を思い出しながら、俺は藍瑠にそう答え、ガンランスの様子を確かめた。
放熱板が閉じている。さっきのアレがもう一発撃てるということならば、いい情報だった。
一方で、槍の穂先はあちこちが欠けたようになっている。刃こぼれってヤツか。
これで十分な威力は出るのか。
「ダンナさんダンナさん、これ何ニャ?飲んでもお腹壊さないニャ?」
藍瑠が何やらビンに入った緑の液体を持って来て、両手で捧げ持つように、俺に差し出す。
ビンのラベルには「応急薬」と、見たことのない字で書いてある。
……ん?
見たことのない字をなんで俺は読めるんだ?
思い直してラベルをもう一度見たが、どうしてもそれは「応急薬」としか読めず、しかもそれは絶対に信頼できると思えた。
「薬だな。怪我をしたときに飲むらしい」
確信しているのに半信半疑と言う不思議な気分で、俺は藍瑠の答える。
「ほんとニャ?」
「ああ、ここに書いてある」
藍瑠はラベルを覗き込んで、あからさまに眉を寄せた。
「……読めないニャ」
ああ。俺も読めない。
でも、わかるんだ。
俺は藍瑠にこれ以上突っ込まれないよう、話題を変える。
「ところで藍瑠、これ、どこで見つけた?」
藍瑠は振り返り、びしっ、と青い箱を指差す。
「あの箱だニャ」
藍瑠に指差された箱を覗き込むと、中には他にもいくつかの物が納められていた。
砥石、携帯食料、地図。
コンビニで強盗に投げつけるようなカラーボール。
あからさまにドクロマークが書かれた瓶と、空の瓶。
縦断まで2種類納められている。
さらに、平べったい箱に納められた何かを手に取ると、これまた読めないはずの文字で「シビレ罠・捕獲用麻酔玉セット」と書いてある。
俺は息を飲む。
こんなゴツい武器を背負っておいて今さらだが、何でもアリか。
しかし、これだけ道具立てがあれば、何とか芦田を倒せるかもしれない。
大体あんな爆炎を食らっているのだ。芦田も無事では済んでいないはずだった。
とりあえず砥石でガンランスの穂先を研ぐ。
素人仕事なので光輝く、という感じではないが、とりあえずボロボロと刃こぼれした感じはなくなった。
それから俺はガンランスをしまい、箱から取り出した道具類を衣装の隙間にねじ込む。
「藍瑠、お前はここで待ってろ」
藍瑠は俺の言葉に首をかしげる。
「なんでニャ?」
お前モノ考えてるか?
「決まってるだろ。熊だぞ?危ないからだ」
「熊は怖いニャ」
藍瑠はコクりと頷き、両手に握りこぶしを作る。
「だから藍瑠はダンナさんにオトモするニャ!!」
藍瑠がそう言いきった瞬間、一面に光が迸る。
光が消えたとき、藍瑠はドングリを象ったようなヘルメットと木目の鎧に身を固め、石斧のようなものを手にしていた。
藍瑠の言葉の意味も、今起きたことも飲み込めず、言葉を失っている俺に、藍瑠は続けて言った。
「熊は怖いニャ」
うん。合ってる。
「だからダンナさんも危ないニャ」
まあ、確かに。
「だから藍瑠はダンナさんにオトモするニャ」
藍瑠はヘルメットの下から、キリッ、という音が聞こえそうな表情で言い放つ。
この顔は藍瑠が自分の理論に絶対の自信を持っているときなので、俺はそれ以上説明するのを諦めた。
「……わかった。じゃあ付いてこい。
ただ、危なくなったら隠れろよ?」
藍瑠はコクリと頷く。
「ところでダンナさん、このカッコは何ニャ?」
藍瑠は自分の体を見回して言う。
俺が知るかよ。
藍瑠と遭遇した場所を離れ、俺たちは芦田を探した。
この不思議空間は実に風光明媚で、滝やら洞窟やら吊り橋やらと、様々な景色に満ちていた。
さっき戦っていた場所よりも多少緑が深いエリアで、俺たちは芦田を見つけた。
芦田はこちらに背中を向けて座り込んでいる。
俺は巨大な切り株の陰に隠れて、芦田の様子をうかがった。
芦田の回りには蜂らしき虫がたかっており、芦田はしきりに手を口に運んでいる。
よく目を凝らすと、芦田は蜂の巣から直接ハチミツを食っていた。
あー、ツッコミたい。
様子をうかがっているのがバカバカしくなった俺は、切り株の陰から飛び出し、芦田の背後で武器を構えた。
ここでやることは決まっている。
俺はガンランスの引き金を深く握り込む。
砲口から炎がゆっくりと噴き出し、爆発に変わる瞬間、俺は叫んだ。
「お前は絵本に出てくるクマかっーーー!!」
反動で後ずさる俺に、芦田はゆっくりと振り返る。
投稿者 ushila : 2011年11月11日 21:28
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