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2011年11月13日
俺と彼女が狩人でオトモ。
突発モンハン学園バトル小説の続き。というかエピローグ。
翌日。
例によって藍瑠をなんとか撒いて登校した俺は、教室に向かう廊下を歩いていた。
しゃー。
後ろから珍妙な音がする。
その音は、廊下の曲がり角の向こうから聞こえてくるらしかった。
しゃー。
音がだんだん近づいてくる。
音の主は曲がり角にぶつかる寸前で曲がり、こちらを向く。
それは、白いカーディガンを着た女子らしきシルエットだった。
しゃー。
彼女はこっちへ迷いなく突っ込んでくる。
俺は廊下の壁に張り付くように避けたのだが。
どごおっ!!
俺を回り込むようにブレーキを掛けた彼女は、俺の脇腹に突っ込んできた。
なんなんだ一体。
「やー、君が半田君だねー!?」
彼女はやたら陽気な声で俺に声を掛けた。
ウサギの耳のように見える白いリボンで髪をポニーテールに結わえた頭を前に傾け、俺の顔を覗き込む。
胸には2年生のクラス章が揺れていた。
……しかし、この人おっぱいでかいな。いろいろ小さい藍瑠とは大違いだ。
いやいやいやいや。
何考えてるんだ俺は。
俺は彼女から目をそらして答える。
「そうですけど、先輩は誰ですか?」
彼女は俺の前に回り込み、また体を前に傾けて言う。
「そうかそうかー。新入生だから仕方ないねー。
私は門幡学園2年、みんなの突進系アイドル、楠巣 潤だよーん?」
ぼよん、という音が聞こえそうなアクションで楠巣先輩は決めポーズをとる。
なんかまた厄介そうな人が出てきた。
俺の額を冷や汗が垂れる。
「そ、それで、楠巣先輩は俺にどんなご用ですか?」
とにかく、なるべく穏便に済ませよう。
「そんな呼び方はナシなんだよー?
ウルちゃんもしくはウル先輩と呼ぶがいー!」
楠巣……ウル先輩は、俺をビシッと指差して言う。
しかし無駄に動きにキレがあるなこの人は。
「昨日はアオちゃんと遊んでくれたみたいだねー!?」
ええと。
昨日俺が遊んだと言えるのは藍瑠だが。一緒に飯食ったし。
藍瑠の知り合いにこんな人はいないはずだし、あいつがアオちゃんなどと呼ばれているのも見たことがない。
「アオちゃん道で寝てるから、起こすの大変だったんだよー?
体大きいし、寝起き悪いしー」
えー。
全く話が見えない。
「えーと。アオちゃんって誰っすか」
ウル先輩は目をぱちくりする。
それから、糸目になって口を半円状に開き、全開の笑顔になった。
「やだなー。君が昨日ハントした相手だよー。芦田 葵ちゃん」
芦田のやつ、葵なんて名前なのか。似合わねぇ。
で、そこで俺は思い出す。この人がウル姉か?
で、そうなると、さっきのは「芦田が世話になったな」と言う不良語の言い換えだろうか?
俺は右足を半歩引いて身構える。
楠巣……ウル先輩(と本人が呼べと言う)は、緊張感なくしゃべり続けた。
「アオちゃんは私の従弟なんだけど、昔からやんちゃで、人の話もあんまり聞かなくて、全く困ったものなんだよー」
人の話を聞かないのはこの人も一緒だと思う。
「機能は君が武装化したからハントになったようなもので、入学直後の一年生は護石を持ってても使い方なんか知らないのにねー。
私はアオちゃんに、あの子護石持ってるね、って言ったけど、まだ使えないよ、って教えてあげたのにー」
いや待て。
芦田は俺とぶつかったのを根に持っていたのではないのか?
「それは、先輩が芦田を俺にけしかけたってことですか?」
ウル先輩は首をかしげる。
「私は間違ったことは言ってないよー?
いつか君とアオちゃんは戦うことになっただろうし」
ウル先輩はそう言って片目をつぶる。
「それに、私ともね?」
そういうとウル先輩はくるりと斜め後ろを向き、右の足首を跳ね上げる。
なぜ校内で着用を許されているかわからないローラーブレードとニーソックスの足首には、護石が揺れている。
俺の目は翻ったスカートの裾に奪われ気味であったのだが。
「まあでも、アオちゃんの性格と言うか、オツムの作りを知っていたのに、たしかに私も軽率だったよー」
ウル先輩はばつが悪そうに頭をかく。
「あ、そうだ。
お詫びにひとついいことを教えてあげるねー?
技術室の先生に、君の護石を見せるといいよー?
アオちゃんから剥ぎ取った素材で何か作れるはずだしー。じゃーねー」
ウル先輩は言い終えると、満面の笑みで廊下を滑り去っていった。
どかっ!!
ウル先輩を見送る俺の脇腹に、今度は軽めの衝撃が襲う。
もう見なくてもわかる。
「ダンナさん!なんで藍瑠を置いていくニャ!!」
「男には一人になりたいときがあるんだよ」
「藍瑠にはないニャ!!」
いつも通り藍瑠との不毛な会話が始まったところで、今度は後ろから羽交い締めにされる。
振りほどこうとして腕を振り回すと、すごい力で左腕をつかみ上げられた。
「がっはっはー。我輩だ我輩ー」
バカ力の主は担任だった。
「さっそく芦田とやりあったらしいな」
言いながら、担任は俺の左手首を見る。
「ほう。1回やられたか。
まあ、準備も説明もなく飛び出せばそんなもんだろう。
しかしガンランスとは、お前なかなかのひねくれ者だな」
担任はそう言って俺の手を離す。
「また痛い目を見たくなければ、いつでも我輩を訪ねてくるといい。
みっちり鍛えてやるぞ?」
そう言ってニヤリと笑うと、担任は俺たちに背を向け、教室に入っていった。
ともかく。
こうして、俺の高校生活は始まるらしかった。
投稿者 ushila : 2011年11月13日 23:24
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